餡子付゛録゛

ソフトウェア開発ツールの便利な使い方を紹介。

動学マクロ経済学と言う名の非線形連立方程式を解いてみる

動学マクロ経済学に関する蓮見氏のレクチャーノートを拝読していて、もう少しRのソースコード部分に補足説明があったほうが分かりやすい気がしたので、ラムゼー・モデル(Ramsey–Cass–Koopmans model)に関して紹介してみたいと思います。

このモデルは連続関数を仮定して変分法で解くこともできるのですが、最近は離散問題に置き換えてコンピューターで数値解を求める方向*1で教えているようです。これは、RBC/DSGEへの拡張が容易である*2ためでしょう。

何はともあれ、こういうモデルを計算してみると、マクロ経済学を直感的に理解できるようになると思います。解き方としてはモデルの式を整理して非線形連立方程式の形に直した上で、始点と終点を整理し、ニュートン・ラフソン法などで解くだけなので、実際にやってみましょう。

1. モデル式 → 非線形連立方程式

まずはモデルを確認しておきましょう。詳しくは蓮見氏のレクチャーノートを見てください。

1.1. 家計

元々のモデルではあまり特定化された関数は置いていない気がしますが、家計の目的関数になる効用関数を以下のようにおきます。

\max_{C} U_t = \sum^{\infty}_{i=t} \beta^{i-t} \ln(C_{i})

t期の消費がC_tになるわけですが、割引率\beta<1があるので、将来の事はあまり気にしません。
制約条件は、以下のようになります。

\mbox{s.t. } r_t K_i + w_i - C_i - I_{i} \geq 0

資本K_iに利率r_tを乗じたものが利子収入、w_iが賃金収入です。つまり、消費C_iと投資I_{i}は収入以下になると言う制約です。
来期の資本の量は今期の資本と投資の合計から、減価償却\delta K_iを引いたものになります。

K_{i+1}=K_i - \delta K_i + I_i

これを制約条件に代入しておきましょう。

\mbox{s.t. } r_tK_i + w_i + K_i - \delta K_i - C_i - K_{i+1} \geq 0

さて、制約付最大化問題を解くために、ラグランジュアンを置きます。

\mathit{L}=\sum^{\infty}_{i=t} \beta^{i-t} \bigg[  \ln(C_{i}) + \lambda_i\{ r_tK_i + w_i + K_i - \delta K_i - C_i - K_{i+1} \} \bigg]

家計が決定できるのは、消費量C_iと投資量K_iなので、それぞれで偏微分をして一階条件を出します。\lambda_i偏微分も忘れずに。

\frac{1}{C_i}-\lambda_i=0

\beta(r_{t+1}+1-\delta)\lambda_{i+1} - \lambda_i=0

r_tK_i + w_i + K_i - \delta K_i - C_i - K_{i+1}=0

1.2. 企業

企業の生産関数は以下のように、コブ=ダグラス型として起きます。

Y_t=A_t K^\alpha L^{1-\alpha}

人口が増えないとしてL=1と置きます。完全競争を仮定して、利子率と賃金を求めます。利子率は資本の限界生産性、賃金は労働の限界生産物に等しくなるわけですね。

r_t=\alpha A_t K_t^{\alpha-1}

w_t= A_t K_t^\alpha-r_tK_t = (1-\alpha) A_t K_t^{\alpha}

生産物は利払いと賃金に分割されるので、以下のように企業の生産物と家計の収入が等しいくなります。

Y_t=A_t K_t^\alpha=r_tK_i + w_i

1.3. 非線形連立方程式

家計の効用最大化の一階条件の三つの式を整理しましょう。\lambda_ir_tw_tを消して、方程式の形式にしています。

\frac{C_{t+1}}{C_t}-\beta(\alpha A_{t+1} K_{t+1}^{\alpha-1}-\delta+1)=0

K_{t+1}-(A_t K_t^\alpha + (1-\delta)K_t - C_t)=0

1.4. 端点の整理

実は最適経路を求める問題なので、始点と終点が無いと計算できません。始点は初期保有ストック量、終点は定常状態となります。
定常状態はt期とt+1期の消費と資本ストックが同一と言う事になります。つまり、C_{t+1}=C_tK_{t+1}=K_tとなる点です。定常点を(C^*, K^*)と置くと、非線形連立方程式の二式から以下のように整理できます。

K^*=\bigg [ \frac{\frac{1}{\beta} + \delta - 1}{\alpha A_t} \bigg ]^{\frac{1}{\alpha - 1}}
C^*= A_t \cdot  K^{*\alpha}  - \delta \cdot K^*

2. カリブレーション

ここからが本題で、蓮見氏のレクチャーノートのソースコードにコメントが無いので、勝手に補足していきます。
数値計算する式は上の二式ですが、パラメーターや初期値を定めないといけませんし、非線形連立方程式を解いてくれるパッケージの使い方も確認する必要があります。

2.1. パラメーター

C_tK_t以外の変数はパラメーターになります。任意でいいのですが、\alpha=0.3\beta=0.99\delta=0.25A_t=1となっていました。

2.2. 初期値

マクロ経済学と言うか数値解析の問題ですが、C_tK_tに初期値が必要です。tが1から30まで計算するとすると、2×30=60変数を初期化する必要があります。レクチャーノートでは何故か定常点(C^*, K^*)が入っているのですが、0より大きな値であれば何でも問題ないです。

2.3. 計算までのソースコード

ようやくコーディングできるだけの情報が揃ったので計算してみましょう。なおレクチャーノートでは消費と投資の行列を作って崩していたのですが、ベクトルを分割するようにしています。

#
# 非線形連立方程式を解くパッケージを読み込む
#
library(nleqslv)


#
# パラメーターの設定
#
alpha <- 0.3
beta <- 0.99
delta <- 0.25
At <- 1.0


#
# 定常状態の計算
# (Kは値で、Cは作図のために関数で戻す)
#
steadystate <- function(){
  sK <- ((1/beta+delta-1)/alpha/At)^(1/(alpha-1))
  list(K=sK, C=function(K=sK){
    At*K^alpha - delta*K
  })
}
SS <- steadystate()


#
# カリブレーションを行う関数
# maxT:計算する期間の長さ, K01:資本ストック初期値
#
calibrate <- function(maxT, K01){
  # レキシカルスコーピングでcalibrate内で定義された変数maxTとK01は、
  # parseXとobjfunからアクセスできる一方でグローバル変数にならない


  #
  # 計算結果から消費と資本ストックを分ける
  # X:計算結果
  #
  parseX <- function(X) {
    # Xは(C[1], C[2], ... , C[maxT], K[2], K[3], ... , K[maxT + 1])と言うベクトル
  
    # Xの前半部分が各期の消費
    # 最後に定常状態を付け加える
    C <- c(X[1:maxT], SS$C())
  
    # Xの後半部分が各期の投資
    # 最初に初期値を付け加える
    K <- c(K01, X[(maxT+1):(2*maxT)])
  
    # リスト構造で値を戻す
    list(C=C, K=K)
  }
  
  #
  # 右辺ゼロの非線形連立方程式を表す関数
  # X:各期の消費と資本ストックを表すベクトル
  #
  objfun <- function(X) {
    # 消費と資本ストックに分ける
    X <- parseX(X)


    # 戻り値のために空ベクトルを創る
    rC <- numeric(maxT)
    rK <- numeric(maxT)
  
    # 線形連立方程式に値を代入していく
    # 2*maxT本の連立方程式になる事に注意
    for(t in 1:maxT) {
      rC[t] <- X$C[t+1]/X$C[t] - beta*(alpha*At*X$K[t+1]^(alpha-1)-delta+1)
      rK[t] <- X$K[t+1] - At*X$K[t]^alpha - (1-delta)*X$K[t]+X$C[t]
    }
  
    # 戻り値を返す
    return(c(rC, rK))
  }


  # 初期値は基本的に任意の値で構わないが、連立方程式内に割り算があるため0は避ける
  Xinit <- c(rep(1, maxT), rep(1, maxT))


  # 非線形連立方程式を解く
  r <- nleqslv(Xinit, objfun)


  # 結果から消費と資本ストックを分ける
  parseX(r$x)
}

# 期間の長さ
maxT <- 30


# 初期資本ストックは定常状態の半分として計算
X1 <- calibrate(maxT, 0.5*SS$K)


# 初期資本ストックは定常状態の倍として計算
X2 <- calibrate(maxT, 2*SS$K)

講義などで発散する経路が必要な場合は、以下のように計算します。

#
# 非定常経路の計算
#
inertia <- function(maxT, K01, C02){
  # 戻り値のために空ベクトルを作る
  C <- numeric(maxT)
  K <- numeric(maxT)
  K[1] <- K01
  C[1] <- C02
  for(t in 2:maxT){
    # 資本の増加式
    K[t] <- At*K[t-1]^alpha + (1 - delta)*K[t-1] - C[t-1]
    # オイラー方程式に従って来期の消費を決定
    C[t] <- beta*(alpha*( K[t-1]^alpha + (1 - delta)*K[t-1] - C[t-1])^(alpha-1) - delta + 1)*C[t-1]
  }
  list(C=C, K=K)
}

# 消費過少経路を計算
NSUC <- inertia(maxT, 0.5*SS$K, X1$C[1] - 0.02)

# 消費過剰経路を計算
NSOC <- inertia(maxT, 0.5*SS$K, X1$C[1] + 0.02)

2.4. 計算結果を描画する

X1$CとX1$Kを眺めてもいいのですが、見栄えが悪いので描画してみましょう。

#
# 定常状態を描画
#
curve(SS$C(x), 0, 3, ylim = c(0.5, 1.1), xlab = expression(K[t]), ylab = expression(C[t]), main="ラムゼーモデルの位相図", lty="dotted")
lines(cbind(c(SS$K, SS$K),c(0, 100)), lty="dotted")
points(SS$K, SS$C(), pch=19)


text(2.5, 0.7, expression(paste(Delta,"K = 0",sep="")), pos=4)
text(1.20, 1.0, expression(paste(Delta,"C = 0",sep="")), pos=4)


#
# 遷移を矢印で描画
# 矢印が密集していると見づらいので、間引く
#
step <- 3
for(i in seq(1, 12, step)){
  arrows(X1$K[i], X1$C[i], X1$K[i+step], X1$C[i+step], length = 0.1)
  arrows(X2$K[i], X2$C[i], X2$K[i+step], X2$C[i+step], length = 0.1)
}
for(i in seq(13, maxT - 1, step)){
  segments(X1$K[i], X1$C[i], X1$K[i+step], X1$C[i+step])
  segments(X2$K[i], X2$C[i], X2$K[i+step], X2$C[i+step])
}

描画される図形は以下のような感じになります。

発散経路を計算した場合は、以下のように続けて描画してください。

#
# 発散経路を描画
# すぐに発散するので間引かない
#
step <- 1
for(i in seq(1, maxT, step)){
arrows(NSOC$K[i], NSOC$C[i], NSOC$K[i+step], NSOC$C[i+step], length = 0.1, lty=1, col="red")
arrows(NSUC$K[i], NSUC$C[i], NSUC$K[i+step], NSUC$C[i+step], length = 0.1, lty=1, col="blue")
}


3. ラムゼー・モデルから分かること

最近の動学マクロ経済学は、もっと複雑なモデルが組まれていますし、パラメーターも実データから推定する世界になっていますが、このラムゼー・モデルが一つの出発的になっているのは間違いないと思います。動学マクロ経済学が、家計が将来を見通して意思決定を行う事を前提としていることが分かります。

*1:カリブレーションと言います。

*2:学生の数学力が低くて済むと言う利点もあるとは思います。

Rのグラフにスプライン曲線を描きこむ

TTFなどのフォントもそうですし、CADなどグラフィックス分野の方が使う事が多いと思いますが、間欠的なデータから連続した線を描画したいときは実用上は多々あります。ラグランジュ補間、ニュートン補間などバリエーションは幾つもありますが、Rではスプライン補間をする事が容易です。
R でグラフ中にプロットされてない値を予測してみる」を見ていたら簡単そうなので、試してみました。y=\frac{\sin(x)}{x}と言う簡単そうで積分するとトリッキーで大変なルベーグ積分不可の関数の極値をつないでみます。
まずは、y=\frac{\sin(x)}{x}を描いてみます。

次に、極値を求めます。

最後に、極大値と極小値をスプライン曲線で結びます。

意味が良く分からないものの、それらしいグラフになりました。ソースコードは以下になります。

# 関数を定義
f <- function(x){
  sin(x)/x
}


# fの一階微分
df <- function(x){
  (cos(x)*x-sin(x))/x^2
}


# fの二階微分
ddf <- function(x){
  (-sin(x)*x*2*x - (cos(x)*x-sin(x))*2*x)/x^4
}


# xの変分
dx <- 0.01
# xを生成(始点を僅かに正にすることでyが∞を回避)
x <- seq(1e-6, 30, dx)
# yを計算
y <- f(x)


getExtremum <- function(x){
  dy <- df(x)
  n <- length(dy)
  # 微分係数dy[i]*dy[i+1]がゼロ以下の場合は符号が逆転しており極値近傍と見なせる
  x[dy[-n]*dy[-1] <= 0]
}
extremum <- getExtremum(x)


# ddf(x[i])が負ならば、極大値
ulim <- c(extremum[ddf(extremum)<0])
# ddf(x[i])が正ならば、極小値
llim <- c(extremum[ddf(extremum)>0])


# スプライン関数を導出
sp_u <- smooth.spline(ulim, f(ulim))
sp_l <- smooth.spline(llim, f(llim))


# xとyのそれぞれ上下限
ylim <- c(-0.5, 1)
xlim <- c(min(x), max(x))


# 余白位置などを調整
par(mgp=c(1, 1, 0), mai=c(1,1,1,1), mar=c(4,3,3,1))


# 元データをプロット
curve(f(x), xlim=xlim, ylim=ylim, type="l", xlab="x", ylab=expression(sin(x)/x), axes=FALSE, main="スプライン関数のお試し")


# スプラインを描画/predict()関数で補間点を計算
par(new=T); plot(predict(sp_u, x), xlim=xlim, ylim=ylim, type="l", lty="dotted", xlab="", ylab="", axes=FALSE, col="red2")
par(new=T); plot(predict(sp_l, x), xlim=xlim, ylim=ylim, type="l", lty="dotted", xlab="", ylab="", axes=FALSE, col="red2")


# スプライン関数の元もプロットしておく
par(new=T); plot(ulim, f(ulim), xlim=xlim, ylim=ylim, type="p", lty="dotted", xlab="", ylab="", axes=FALSE, bg="gray")
par(new=T); plot(llim, f(llim), xlim=xlim, ylim=ylim, type="p", lty="dotted", xlab="", ylab="", axes=FALSE, bg="gray")


# 軸を描画
axis(1, at=seq(0, 30, 10), pos=ylim[1])
axis(2, at=c(seq(ylim[1], ylim[2], 0.25)), pos=0)

極大値と極小値を計算するほうが手間がかかっていますね。

Rで偏微分方程式

速度的に実用性が低い感じもするのですが、Rで偏微分方程式の数値解を計算することもできます。微分方程式一般に言えることですが、せっせと計算して閉じた解を求めるのは苦労するので、数値解は実用的には重要です。
deSolveパッケージを使えば三元連立式ぐらいまでは容易で、使い方はサンプル・コードを見ればよいのですが、恐らく最も見慣れている偏微分方程式である波動方程式のサンプルを書いてみました。
deSolveの旧バージョンであるReacTranパッケージのリファレンスに例としては上がっているわけですが、パッケージの構成が変わってそのままでは動かないので、もしかしたら参考になるかも知れません。

1. 計算の概要

まずは波動方程式を眺めてみましょう。波動関数u(t,x)で、xを位置、tを時間とします。cは波動の速度。
\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = c^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
偏微分方程式のままだと解けないので、常微分方程式に変形します。
\frac{\partial u_1}{\partial t} = u_2
\frac{\partial u_2}{\partial t} = c^2 \frac{\partial^2 u_1}{\partial x^2}
初期パラメーターを以下のようにします。力学的振動のときと異なって、ベクトルで大量の値がセットされることに注意してください。
u_1(0,x)=exp{-0.05x^2}
u_2(0,x)=u(t,\infty)=u(t,-\infty)=0
c=1
この式からそのままコーディングできる人は、かなり数値演算に慣れていると思います。

2. 実際の演算コード

以下が実際のコードになります。ポイントは恐らく、二階微分を行うところになると思います。数値微分のちょっとした知識が要ります。deSolveパッケージの癖で、複数の変数のベクトルが、一つのベクトルにまとめられているのも、注意しないと混乱するかも知れません。

# deSolveパッケージを読み出す
library("deSolve")
# 位置xの刻み幅は0.2
dx <- 0.2
# xの最小値と最大値
xlim <- c(-70, 70)
# -40から40まで位置xのベクトルを得る
x <- seq(xlim[1], xlim[2], dx)
# xの数を保存しておく
N <- length(x)
# 波の高さの初期値
uini <- exp(-0.05 * x^2)
# 波の高さの変化分の初期値
vini <- rep(0, N)
# パラメーターは同じベクターにしておく
yini <- c(uini, vini)
# 時間tのベクトルを得る
times <- seq (from = 0, to = 50, by = 1)
# 常微分方程式の形式で、波動方程式を表現する
wave <- function(t, y, parms, dx, N) {
 # ベクターを二つに分ける
 u1 <- y[1:N]
 u2 <- y[(N+1):(2*N)]
 # 波の高さの変化を計算
 du1 <- u2
 # 波の高さの変化分の変化の計算
 # 二階微分を行う。両端の変化率は境界条件によりゼロ。
 du2 <- c(0, (diff(u1[-1],1) - diff(u1[-N],1))/dx^2, 0)
 # 変化を戻り値で返す
 return(list(c(du1, du2)))
}
# ode.1D関数は一次元微分方程式を扱う。
# nspecは計算する変数の数で、ここではu1とu2で二つ。
# 計算手法はデフォルトだと収束しなくなるので、ode45
out <- ode.1D(yini, times, wave, parms = 0, nspec = 2, dx=dx, N=N, method="ode45", atol=1e-14, rtol=1e-14)

ちょっと時間がかかると思いますが、気長に待てば計算できるでしょう。

3. 演算結果をプロットしてみる

出てきた計算結果は以下のようにプロットしたり、中身を見ることができます。

# 波の変化をプロットしてみる
matplot.1D(out, which=1, subset = time %in% seq(0, 50, by = 10), type = "l", col = c("black", rep("darkgrey", 5)), lwd = 2, grid = x, xlim = xlim, main="u(x, t)")
legend("topright", lty = 1:6, lwd = 2, col = c("black", rep("darkgrey", 5)), legend = paste("t = ",seq(0, 50, by = 10)))

# 等高線プロットをしてみる
image(out, xlab = "t", ylab = "x", main = "PDE", add.contour = FALSE)

左がu(t, x)、右がduになります。色が波動の高さで、赤色が高く青色が低くなります。表題などを綺麗にする方法は調査中。

# t=30のときの大きさを波の形状を見てみる。ylim重要。
plot(out[30,][1:N], ylim=c(0, 1), xlab="x", ylab="u")
# 中央地点x=2*N/3の波の高さの変化を見る
plot(out[,2*N/3][1:length(times)], ylim=c(0, 1), xlab="t", ylab="u")

コンピューターを使っている気になれますね。

Rで常微分方程式

自発的には揺れないボロビルの力学的振動は、単純化すると以下のように表されます。
\frac{d^2y}{d^2t} + k\frac{dy}{dt} + \omega^2 y = 0
yが揺れ幅(変位)、\omega固有振動数で、kが抵抗です。tは時間を表します。これをプロットしてみましょう。

1. 閉じた解を求める

定係数二階同次方程式なので、数学的に解くことができます。細かい計算は省略します。
y = C_1 e^{-\frac{k}{2} t} \cos{ \Bigg ( t \sqrt{ \omega^2 - \frac{k^2}{4}} \Bigg )} + C_2 e^{-\frac{k}{2}t} \sin{ \Bigg ( t \sqrt{ \omega^2 - \frac{k^2}{4}} \Bigg ) }
ほぼこのまま、curveで描画できます。

C1 <- 5; C2 <- 5; k <- 0.1; omega <- 1
curve(C1*exp(-k/2*t)*cos(t*sqrt(omega^2-k^2/4)) + C2*exp(-k/2*t)*sin(t*sqrt(omega^2-k^2/4)), 0, 100, n=1000, xname="t", ylab="y")

もっと複雑な式になると、辛い思いをします。

2. 微分方程式のまま処理する

y=y_1dy_1/dt=y_2と置いて、連立微分方程式に展開してみましょう。
\frac{dy_1}{dt} = y_2
\frac{dy_2}{dt} = - ky_2 -\omega^2 y_1
この状態で、deSolveパッケージに渡すことができます。

library("deSolve")

model <- function(t, Y, params){
# params["omega"]としなくていいようにwithを使う
  with(as.list(params),{
    dy1 = Y[2]
    dy2 = -omega^2*Y[1] - k*Y[2]
    list(c(dy1, dy2))
  })
}

# 変位Y1とその微分の初期値
Y <- c(y1=8, y2=0)
# t=0からt=100まで0.1刻みで計算する
times <- seq(0, 100, 0.1)
# 常微分方程式を計算する
out1 <- ode(Y, times, model, parms = c(omega=1, k=0.1, F0=0.35, beta=1))

# プロットする上下の限界
ylim <- c(-10, 10)

# プロットする。軸は書かない
plot(y1 ~ time, data=out1, type="l", ylim=ylim, axes=FALSE, ylab="揺れ幅(=変位)", xlab="時間", lwd=1, main="固有振動数と揺れ幅")

# 軸を描画
axis(1, labels=seq(0, 100, 25), at=seq(0, 100, 25), pos=ylim[1])
axis(2, labels=seq(-10, 10, 5), at=seq(-10, 10, 5), pos=0)

プロット結果は以下のようになります。

3. deSolveパッケージに関して

初期値問題、微分代数方程式、偏微分方程式も解ける優れモノです。詳しい説明は以下を参照してください。

  • Soetaert, Petzoldt, and Setzer (2010) "Solving Differential Equations in R: Package deSolve," Journal of Statistical Software, Vol.33(9)

Rでパスワードを作る

最近はウェブサービスが乱立している事もあり、パスワードが漏洩する事件も良く聞くようになりました。この時に複数のサイトでパスワードが共通にしている人は、被害が他のサイトにも拡大していく可能性があります。
それを避けるために複数サイトで異なるパスワードを使うように推奨されていますが、人間がパスワードを生成すると何かの単語になりがちです。Appleのように厳しいパスワードを求めてくるサイトもあるので、自動で生成してみましょう。

#
# 'A', 'B', 'C' ... と言うパスワードに用いる文字のベクターを作る関数
# begin: 開始文字
# len: 長さ
# exception: 除外する文字
#
make_set <- function(begin, len, exception=c()){
  v <- strsplit(rawToChar(as.raw(0:(len-1) + as.integer(charToRaw(begin)))), "")[[1]]
  v[!v %in% exception]
}


#
# A〜Z、a〜z、0〜9のベクターを作る
# ただし紛らわしいIとl、Oと0は除外
#
chr_set_A <- make_set("A", 26, c("I", "O"))
chr_set_a <- make_set("a", 26, c("l"))
chr_set_0 <- make_set("0", 10, c("0"))
# 三つを合成する
chr_set <- c(chr_set_A, chr_set_a, chr_set_0)
# 乱数を初期化
# 注意:Seedの生成方法が分かるとパスワードを特定されやすくなるので、ある程度の長さの任意の数字(secret_code)を加えるなどした方が安全。
secret_code <- 192837465
set.seed(as.integer((1000*as.numeric(format(Sys.time(),"%y%j%H%M%OS3")) + secret_code) %% .Machine$integer.max))
#
# Apple IDを意識して、三種類の文字がないと脆弱パスワードと見なす関数
# clst: パスワードに使う文字のベクター
#
is_strong <- function(clst){
  if(!any(clst %in% chr_set_A)){
    return(FALSE)
  }
  if(!any(clst %in% chr_set_a)){
    return(FALSE)
  }
  if(!any(clst %in% chr_set_0)){
    return(FALSE)
  }
  # 三連続同一文字の禁止
  len <- length(clst)
  if(3 > len){
    return(FALSE)
  }
  for(i in 1:(len-2)){
    if(clst[i]==clst[i+1] & clst[i]==clst[i+2]){
      return(FALSE)
    }
  }
  TRUE
}


#
# 強度のあるパスワードを作る関数
# args: [パスワードの長さ#1],[パスワードの長さ#2]...
#
mkpasswd <- function(...){
  digit <- length(chr_set) # パスワードの各桁の文字種の数
  # Rらしく引数の数は不定
  len <- c(...)
  num <- length(len)
  # 戻り値を初期化しておく
  r <- character(num)
  for(i in 1:num){
    # 3以下のパラメーターは計算できないので、除外
    if(3>len[i]){
      r[i] <- NaN
      next
    }
    # 強度を満たすまで生成しなおす
    clst <- c()
    while(!is_strong(clst)){
      # +0.5がないと、最初の一文字の発生確率が半分になってしまう
      clst <- chr_set[round(runif(len[i], 0, digit) + 0.5)]
    }
    # collapse引数が無いとベクターは合体しない
    r[i] <- paste(clst, collapse="")
  }
  r
}


# 8文字のパスワードを作ってみる
sprintf("生成されたパスワード: %s", mkpasswd(8))

本当の問題は、どうやって大量のパスワードを管理するかなのですが、強度のあるパスワードを簡単に作る事ができます。

Rでlmコマンドの結果からStd. Errorを取得する

たまに回帰分析の係数の区間推定を求めたいときがあります。
lmコマンドの推定結果から標準誤差(Std. Error)を取得するときは、以下のようにすると簡単です。

r <- lm(expression) # expressionは任意の推定式です
coef(summary(r))[, 2]

例えば3番目の係数の95%信頼区間を求めたいときは、以下のようにしてください。

a <- 0.05/2 # 両側検定
df <- summary(r)$df[2] # 自由度
b <- coef(r)[3] # 3番目の係数
se <- coef(summary(r))[, 2][3] # 3番目の標準誤差
sprintf("%.3f(95%%信頼区間%.3f〜%.3f)", b, b-se*qt(a, df), b+se*qt(a, df))

[3]を無くせば、全係数の区間推定量が出ます。

Account Auto-DiscoveryをBloggerテンプレートに埋め込む

ブログ・サービスのBloggerはテンプレートが使えるのですが、ダブル・コーテーション(")で書いたタグが、シングル・コーテーション(')に勝手に変換される癖があります。仕様上は特に問題が無いのですが、はてなブックマークのAccount Auto-Discoveryを埋め込むときに苦労したのでメモを書きます。

Account Auto-Discoveryは、はてな以外のサービスにあるコンテンツに関して、はてなのブックマークなどのサービスの制御を許すプロトコルです。ブックマークされた後にタイトル等を変更したくなるときがある場合は、対応をしておくと便利です。

基本的にBloggerのテンプレートの〜の間に、以下のようなXMLをエスケープ内に埋め込めば良くなっています。

&lt;!--
<rdf:RDF xmlns:foaf='http://xmlns.com/foaf/0.1/' xmlns:rdf='http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#'>
<rdf:Description expr:rdf:about='data:blog.url'>
<foaf:maker rdf:parseType='Resource'>
<foaf:holdsAccount>
<foaf:OnlineAccount foaf:accountName='はてなアカウント'>
<foaf:accountServiceHomepage rdf:resource='http://www.hatena.ne.jp/'/>
</foaf:OnlineAccount>
</foaf:holdsAccount>
</foaf:maker>
</rdf:Description>
</rdf:RDF>
 --&gt;


しかし以前から何度か試しているのですが、どうも上手く動きません。別のサイトの静的HTMLに同様のコードを埋めたときは上手く行くのにです。

おかしいなと思いつつ半年ぐらい経過したある日、別のサイトの静的HTMLをダブルコーテーションからシングルコーテーションに変えてみたら、うまく動かなくなりました。XHTMLの仕様上は、属性のブルコーテーションとシングルコーテーションに差異はないはずなのにです。

2月29日にはてなに要望を出したところ、3月15日に対応がされ、Account Auto-Discoveryが使えるようになりました。Bloggerユーザーで新テンプレートを使っていて、以前にAccount Auto-Discoveryの設定で悩んだ人は、今、リトライを行うと上手く行くかも知れません。